税務調査を受けると概ね2割程度の方が7年の期間遡及し修正申告書の提出を求められます。今回は何故7年も遡って税務調査の対象となってしまうのか、について税務調査専門税理士ご説明致します。
■事前通知段階での税務調査対象期間は原則3年だが途中で5年になる可能性がある
■重加算税の賦課を狙った税務調査の場合は事前通知の段階で5年の期間宣言される
■税務調査官は安易に7年の期間遡及し修正申告書を求めてくる場合がある
業種的に現金商売だったり国税局の資料調査課や税務署の特別調査を除けば、通常は税務調査の数週間前に顧問税理士や納税者本人に対し、
『〇月〇日に法人税・所得税・消費税の税務調査を3年分実施したいのですが』と税務調査官からの電話連絡で対象となる期間が通知されます。
この電話連絡は税務調査の事前通知と言われるもので、国税通則法という法律により『税務調査対象期間』を事前に顧問税理士等に通知することが求められています。
したがって、税務調査官がこの義務(税務調査の事前通知)を実施しない場合は、特定の事案を除き税務調査手続の瑕疵になります。
通常事前通知段階の税務調査対象期間は3年となりますが、これは各国税局の指示もあり、原則として一律の取扱いとなっているのです。
しかしながら、顧問税理士等に対する事前通知の段階で『税務調査対象期間として5年分実施したい』と連絡してくる税務調査官も少なからずいます。
税務調査専門税理士の肌感覚としては、概ね2割ぐらいの税務調査事案が事前通知の段階で対象期間5年と言われているように感じます。
ちなみに無申告の場合は、原則として税務調査前の事前連絡において『調査対象期間は(3年でなく)5年です』と通知されます。
税務調査の結果、修正申告書の提出期間が3年でなく5年になってしまうケースは2つに分かれます。
一つ目のケースは、顧問税理士等に対する事前通知の段階では税務調査対象期間が3年だったのに税務調査の実施中に期間が5年と宣言されてしまう場合です。
期間3年で税務調査を実施している段階で、税務調査官が4年前や5年前の期間にも同様の問題点(売上計上漏れや経費の否認など)が存在すると判断した場合、
税務調査官は上司である統括国税調査官の指示に基づき、追加で2年の期間を税務調査の対象期間にすることが出来るのです。
当初3年だった税務調査対象期間が途中で5年に延長されてしまう主なケースは以下の通りです。
■仮装隠ぺいの事実はないものの比較的多額な問題点が把握された場合
☞売上計上漏れ等消費税に連動する場合は可能性大
■比較的多額な消費税固有(課非判定誤り等)の問題点が把握された場合
☞消費税は預り金的な性格を有するため厳しい
■調査対象法人(個人)の規模が大きい場合
☞署内稟議で幹部決裁になるため国税通則法に則り5年となりやすい
二つ目のケースは、事前通知の段階で最初から税務調査期間が5年と通知されてしまう場合です。
この場合は、申告しておらず無申告となっているか若しくは重加算税が賦課されるような仮装隠ぺいの事実をすでに税務調査官が掴んでいることが考えられます。
売上除外や架空外注費など仮想隠ぺいの事実が事前に想定される場合、税務調査官は事前通知の段階で期間を5年と通知するのですが、
途中で6年前・7年前を税務調査対象期間として追加するため、最終的には7年の期間遡及して修正申告書の提出を求められることになります。
前述のように、税務調査官は『偽りその他不正の行為』をした納税者に対しは7年の期間遡及して税務調査を実施し、修正申告書の提出も同じく7年の期間求めることが出来ます。
『偽りその他不正の行為』とは誤解を恐れずに言うのであれば『脱税』と同意となります。
具体的な行為としては、
■申告漏れについて自らに帰属しないような外形を作出している
■虚偽の資料を作成するなどして申告漏れが発覚し難い状況を作出している
などのケースが該当します。
税務調査官は質問応答記録書への署名を求めることにより、安易に7年の期間遡及して修正申告書をするよう勧奨してくることが稀にあるのですが、
ご自身の行為がまさに『偽りその他不正の行為』に該当するのかどうか、この点は専門家である信頼出来る税理士に意見を求めるべきです。
【注】実務上は、7年の期間遡及するための根拠である『偽りその他不正の行為』と重加算税の賦課要件である『仮想隠ぺいの事実』とは同様なものと考えて差し使えないでしょう。
財務省主税局勤務のほか東京国税局管内の税務署統括国税調査官や国税庁主任税務分析専門官等を経て退官。テレビ出演、新聞・雑誌等メディアに掲載多数。
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