青色申告特別控除と税務調査の関係について税務調査専門税理士が詳しくご説明いたします。
■節税を考えるなら65万円の青色申告特別控除は最も効果的な選択肢である
■税務調査で重加算税が賦課されても青色申告が取り消されることはほぼない
■65万円の青色申告特別控除は帳簿の状況次第で税務調査官に否認される
今回の記事は個人事業主様向けに書いています。
青色申告の承認を受けることで様々な税制上の特典があるのですが
最も重要なのは青色申告特別控除です。
青色申告特別控除は小規模企業共済やideco(イデコ)以上に強力な節税効果がありますので
まだ適用を受けていない個人事業主の方はぜひ申請されることをお勧め致します。
令和2年分以後の所得税確定申告書における青色申告特別控除の額は以下のとおりです。
〇書面申告の場合は55万円
〇電子申告(e-Tax)の場合は65万円
令和元年分の所得税確定申告書までは書面申告でも電子申告でも青色申告特別控除額が65万円だったのですが
税制改正により上のように変更されていますのでご注意ください。
ただし、
①複式簿記で記帳していなかったり
②貸借対照表を作成していない
場合の青色申告特別控除の額は10万円となります。
ちなみに、65万円の青色申告特別控除を受けると
累進税率が20%の方の場合、住民税の10%と合わせると
65万円×(20%+10%)=195,000円の節税効果がありますので
申請しないという選択肢はないと思います。
まだ白色申告だったり10万円の青色申告特別控除しか受けていない方は
ぜひ65万円の青色申告特別控除を検討してください。
なお、令和2年分以降の所得税確定申告書では
税制改正により基礎控除が38万円から48万円に変更されていますのでご注意ください。
せっかく承認されたとしても以下のような事由により取り消される場合がありますので注意が必要です。
【ケース1】帳簿書類を提示しない場合
税務調査に当たり帳簿書類の提示を再三にわたり税務調査官に求められたにもかかわらず正当な理由なく提示を拒否した場合
【ケース2】税務調査で多額の不正計算が把握された場合
隠ぺい又は仮装の事実に基づく多額(原則として500万円以上)の不正増加所得が把握された場合
もっとも【ケース1】の場合は間違いなく青色申告の承認取消となりますが
【ケース2】の場合は実際に青色申告の承認取消が行われることは極めて稀です。
というのも【ケース2】の場合には
今後適正な申告が期待できると認められる場合には青色申告の承認取消を見合わせる、というルールがあるためです。
実務的には、重加算税の対象となるような多額な不正計算が把握されたとしても
『今後は適正な申告を行います』という一言を申述書等にて宣言することにより
初回であれば青色申告の承認取消を回避出来るケースがほとんどです。
65万円の青色申告特別控除を受けている方でも
〇会計ソフトを利用していないため複式簿記に依らず帳簿が不完全であったり
〇損益計算書のみで貸借対照表を作成していない
と言う方が稀にいらっしゃいます。
多くの方は最初から記帳していなかったわけではなく
会計ソフトの操作が難しいため途中で入力を諦めてしまった方が多いように感じます。
弥生会計やfreee(フリー)など、会計知識の無い方にも優しい仕様にはなっていますが
可能であれば日商簿記3級程度の知識を身につけておくと
より興味をもって会計ソフトへの入力が問題なく出来るような気がします。
さていよいよ本題ですが
税務調査において税務調査官より『帳簿がしっかりと記帳されてませんね』と言われる場合があります。
このような場合、税務調査官の頭の中では
『さすがに青色申告承認取消対象ではないが、青色申告特別控除を65万円から10万円に是正しないといけない』と考えていることが多いです。
差額は55万円(65万円ー10万円)ですので、他に問題点が無かったとしてもそこそこの追徴税額になってしまいます。
あと、この点は税務調査官次第ではあるのですが
売上や必要経費にそれなりの問題点がある場合には
『今回は青色申告特別控除については指導事項(つまり修正申告対場外)にしますので、売上や必要経費の問題のみ修正申告書を提出してください』と言ってくれる税務調査官もいます。
逆に『(売上や必要経費に問題点が全くないので)青色申告特別控除については65万円控除でなく10万円控除を適用して修正申告書を提出してください』と毅然とした態度で臨む税務調査官もいらっしゃいます。
この辺の判断は税理士でも非常に難しいのですが
65万円の青色申告特別控除の適用を受けている場合で税務調査の対象となった際には
売上や必要経費の問題だけでなく帳簿がしっかりと複式簿記に従い記帳されているか
という観点でも事前に確認することが必要です。
財務省主税局勤務のほか東京国税局管内の税務署統括国税調査官や国税庁主任税務分析専門官等を経て退官。テレビ出演、新聞・雑誌等メディアに掲載多数。
LINE ↓友だち追加↓
税務調査情報をお伝えいたします
お気軽に友だち追加してください