今回は税務調査の目的について税務調査専門税理士がご説明いたします。
15年程前になりますが国税通則法が改正され、法人や個人事業主等の納税者の予見可能性に資するべく、
令和7年の現時点において、税務調査官は税務調査の事前通知(通常は電話)の段階で、「税務調査の目的」を納税者に伝えることになっています。
でも、当然ではありますが、税務調査官は「具体的な内容については一切言ってくれません」。
税務調査の前に具体的な目的を言ってしまったら、はっきり言って税務調査になりませんからね。
では、税務調査官が目的についてどのような言い方をするかと言うと、これは「セレモニー」として言い方が決まっています。
既に確定申告書を提出済の納税者(法人や個人事業主)に対する税務調査の場合、税務調査官は「税務調査の目的は申告所得金額または申告書記載内容の確認です」と言います。
また無申告の納税者(法人や個人事業主)に対する税務調査の場合は、「申告義務の有無についての確認」と言います。
原則として、税務調査官はこれ以上のことは言ってくれません。
実際は、税務調査において仮装隠蔽の事実を把握し、重加算税を賦課決定したい、というのが調査官の本音ですので、
国税局や税務署内での事前の準備調査の段階で、集中的に確認すべき項目について目星を付けています。
例えば、「外注費が多いから集中的に確認する」、あるいは「簿外の銀行口座への入金があるから売上除外の有無を確認する」とか。
まあ確かに、税務調査前にそこまで納税者に言ってしまうと、さすがに税務調査の意味がなくなってしまう気もします。
かと言って、現状のように税務調査官から、「税務調査の目的は申告所得金額または申告書記載内容の確認です。」などと言われてしまうと、
私のような税務調査を専門としている税理士の立場としては、改正された国税通則法改正の趣旨からして「これってどうなのだろうか?」、と感じてしまいます。
財務省主税局勤務のほか東京国税局管内の税務署統括国税調査官や国税庁主任税務分析専門官等を経て退官。テレビ出演、新聞・雑誌等メディアに掲載多数。
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