税務調査で問題点が把握されると、税務調査官は過去の年分(事業年度)についても同様の問題点がないかどうか、調査対象年分(事業年度)をさかのぼることになります。
果たして税務調査官は過去何年分をさかのぼるのか。具体的には3年・5年・7年の一体どれなのか。本記事では税務調査の結果何年さかのぼることになるのか、についてご説明しています。
■税務調査の実務においては基本的に3年さかのぼるケースが最も多い
■申告漏れが多額な場合は5年さかのぼる(法律上は5年さかのぼれる)
■仮装隠ぺいの事実があり重加算税対象となった場合は7年さかのぼる
「国税通則法」という法律が改正され、更正の請求書(税金の還付申請書)の提出期限が1年から5年に延長されたことに伴い、
税務調査についても5年前までさかのぼることが法律で明確化されました。言ってみればアメとムチのようなものですね。
つまり税務調査の結果何らかの問題点があった場合には、5年前まで遡って修正申告書を提出することになったのです。
一方で税務調査の実務において、果たして過去何年分さかのぼることになるのかというと、
結論としては「3年」の場合と「5年」の場合があります。
では3年と5年の違いは何なのか?具体的な基準は?というと、
明確な答えを出せる税理士は私を含め存在しないでしょう。
国税OBであり元税務調査官である私が思うには、税務調査の結果過去何年分さかのぼることになるのか、
それは税務調査事案の重要性次第と感じています。
多額の申告漏れが把握されたような事案は、署内において署長若しくは副署長等の幹部決裁が必要となります。
☞その場合は5年分さかのぼることになる。
一方で、少額な申告漏れしか把握されなかったような事案は、署内において担当統括官決裁となります。
☞その場合は3年分しかさかのぼらない。
前述しましたが法律上は5年さかのぼることが許容されていますので、
税務署の幹部職員にも報告されるような多額の申告漏れ事案については、
税務署側も会計検査院によるチェックを受けるため法律に則した処理が要請されるためなのか、
安易に「3年しかさかのぼりませんよ」とは言いにくいのかもしれません。
ちなみに無申告の税務調査においてはたとえ所得金額が僅少だったとしても、
必ず5年前までさかのぼることになります。
うん十年も前の話になりますが私が税務調査官一年目の時は、
先輩から「悪いことしてなければ3年分さかのぼる、悪いことしてたら5年分さかのぼる」と教わりました。
「悪いことしてない」というのは仮装隠ぺいの事実がない「過少申告加算税対象」の場合ですし、
「悪いことしてる」というのは仮装隠ぺいの事実がある「重加算税対象」の場合、ということです。
以下は国税庁ホームページに掲載されている重加算税の賦課基準となります。ぜひご覧ください。
しかしながら現在では前述した「国税通則法」という法律が改正されていますので、
「悪いことしてない場合でも5年分さかのぼる、悪いことしてる場合はなんと7年分さかのぼる」ことになっています。
具体的には、(故意に)仮装隠ぺいをすることで売上除外などをしてしまうと、
重加算税対象として7年分さかのぼって修正申告書を提出するよう税務調査官から勧奨されてしまいます。
なお7年遡及のためには、厳密に言うと「偽りその他不正の行為」が必要なのですが、本記事では便宜上「仮装隠ぺいの事実」と同視しております。
話は変わりますが、そもそも税務調査の頻度や確率ってどのくらいなの?という記事は下記をご覧ください。
税務調査官は原則として、納税者の事業所にやって来る前に「あなたの税務調査の対象は〇年分です」と事前通知するのがルールとなっています。
これは国税通則法という法律に規定された手続であり、税務調査前の事前通知事項として調査対象年分を納税者に伝える必要があるのです。
よくある話が「最初は3年分の税務調査と言っていながら結局は7年分も税金払うことになった。話が違うじゃないか。」というものです。
税務署の運用ルールとして最初は3年分を税務調査対象として宣言(通知)するものの、
税務調査の過程でそれ以前の年分も確認する必要が生じた場合には、4年以前の年分についても追加で税務調査宣言することができるのです。
そういう意味では最終的に何年さかのぼるのか?については、
税務調査前の事前通知段階での年数とは関係なく、税務調査の過程で得た税務調査官の心証に委ねられているのです。
そのため早い段階で税務調査に強い税理士に相談し、可能であれば税務調査の立会を依頼すべきと考えます。
財務省主税局勤務のほか東京国税局管内の税務署統括国税調査官や国税庁主任税務分析専門官等を経て退官。テレビ出演、新聞・雑誌等メディアに掲載多数。
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