首都圏では新型コロナウイルスの感染者数が随分と少なくなりました
第2回目の緊急事態宣言が令和3年3月7日に解除される見込みである、との報道もあります
これまで東京国税局管内の東京都・神奈川県・千葉県や隣接する埼玉県などの税務署では
税務調査の新規着手を控えていたようですが
令和2年分の確定申告期限である令和3年4月15日を過ぎた辺りから
税務調査の新規着手が再開されるのでは、と考えています
と言っても税務調査官は毎年7月が定期人事異動のため
必然的に本格的な税務調査は令和3年7月中旬以降になるものと思われます
さてその税務調査についてですが
本日は基本的な流れをお話しさせていただきます
個人事業主やフリーランスの方の場合は
顧問税理士が関与しているケースが少ないので
原則として納税者本人に対し税務署の税務調査官から突然電話がきます
この電話こそが税務調査の始まり、と考えていただいて良いでしょう
当たり前ですが電話で税務調査は出来ませんので
この電話でもって税務調査官から伝えられるのは『事前通知』と言われるものになります
『事前通知』とは国税通則法という法律により
原則として税務調査の前に納税者に伝えることが義務付けられているのです
税務調査官が伝える『事前通知』は
①税務調査の日時
②税務調査の場所
③税務調査の目的
④税務調査の対象期間
☞通常3年、但し無申告は5年
⑤準備する書類
等が主な内容です
まあどれをとっても当たり前と言えば当たり前なのですが
注意点が2つあります
1点目は、税務調査の日時は納税者の事情に配慮して貰えるということです
大切な商談があるとかお身内の方の冠婚葬祭と重なっているとか
そのような事情がある場合には遠慮せず税務調査官に対し申し入れましょう
2点目は、税務調査の場所になるのですが
基本的に税務調査官は帳簿書類や重要な書類の保管場所で税務調査を実施したいのです
通常であれば事務所や店舗、場合によっては自宅になると思うのですが
どうしても事務所、店舗、自宅で実施されては困るという理由があるのであれば
この点についても税務調査官に対し丁寧に説明すべきです。税理士に依頼するのであれば税理士を介して税務調査官に申し入れた方が良いでしょう
ちなみに事前通知の項目に『③税務調査の目的』というものがありますが
これは税務調査官の言い方が決まっているのです
具体的には、税務調査官は『税務調査の目的は申告書記載内容の確認です』と納税者に伝えることになっています
あまり意味のある通知とは思えないのですが
よくよく考えてみるとまだ税務調査が開始されていない状況で
『あなたは〇〇〇が疑わしいので税務調査を実施するんですよ』と
事前に手の内を見せるようなことを電話では言わないのです
個人事業主やフリーランスの方に対する所得税の税務調査ですと
多くの場合、午前10時に税務調査官が1人でやってきます
最近では先輩調査官と組んで2人で来ることもしばしばありますが
新人調査官の指導係として来ているだけですのであまり心配する必要はありません
通常ですと税務調査官が事務所や店舗に来るのは半日~1日のみです
と言っても
この半日若しくは1日で税務調査が終了になるわけではありません
税務調査官は事務所や店舗で確認した項目について
税務署に戻った後に上司である統括国税調査官という方の指示を受け
様々なチェック(裏どり)を行うのです
通常ですと完全に税務調査が終了するのは短くて一カ月
長引くと三カ月を超えることもあるのです
つまり税務調査が1日で完全に終了することはあり得ないのです
税務調査の流れは大体決まっていて
まずは納税者の事業概況を聴き取ることから始まります
次に売上が正しいか確認するために銀行の通帳や受注簿等の原始記録
更には請求書控や領収証書控などを確認します
売上の次は必要経費の確認になるのですが
これも銀行の通帳はもちろんのこと取引先からの請求書や領収書などが確認対象となります
なお、特に若い税務調査官ですと
1日で見切れなかった帳簿書類や領収書等の証憑類を預っていくことがあります
要は、時間がないので税務署でじっくりとチェックしたいのです
税務調査官が税務署内でのチェック(裏どり)等の作業を一通り終えると
税務調査の終結に向け大詰めの話をすることになります
私のような税務調査専門の税理士からするとこの段階が一番重要なフェーズとなります
ここでは詳しい説明を割愛しますが
仮に税務調査官の指摘事項に誤りがあるのであれば
明確にその旨を主張しなければなりません
最終的には税務調査官が国税通則法と言う法律の規程に基づき「調査結果の説明」を納税者に対し口頭で実施するのですが
大切なことは、その前の段階で主張すべき部分があるのであればしっかりと税務調査官に対し主張する必要があるということです
税務調査官に対し理路整然と丁寧に説明することにより
納得してもらえることも多々あるのです
税務調査官の指摘事項が納得できるものであれば
修正申告書を提出することで税務調査は完全に終了します
逆に税務調査官の指摘事項にどうしても納得できないのであれば
無理に修正申告書を提出する必要はありません
この場合税務署長より更正処分というものを受けることになるのですが
通常は(更正処分を受けるよりも)修正申告書を提出した方が納税者にとって有利になる場合が多いです
税理士(元国税調査官)佐川洋一
財務省主税局勤務のほか東京国税局管内の税務署統括国税調査官や国税庁主任税務分析専門官等を経て退官。テレビ出演、新聞・雑誌等メディアに掲載多数。
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