税務調査手法の一つである現物確認調査についてご説明いたします。
■現物確認調査は実施前に必ず代表者や税理士に承諾を得てから行われる
■税務調査において不正計算が疑われる場合には現物確認調査が必須となる
■現物確認調査の中でもパソコン調査は最も重視される税務調査手法である
税務調査の流れですが、税務調査官は最初に代表者から事業の概況を聴取した上で、次に帳簿調査に進むのが一般的です。
事業概況の聴取は世間話しを交えながら行われることが多いのですが、
私のような税務調査専門税理士ですとこの時点で税務調査官の力量をほぼ判断することが出来ます。
ベテラン税務調査官ですと話が絶妙ですし、あくまで自然にさりげなく聞きたいことを代表者や税理士に質問してきます。
税務調査においては、納税者が作成した帳簿を確認する帳簿調査がメインにはなりますが、
より納税者の懐に入っていく現物確認調査と言われる税務調査手法も重視されています。
現物確認調査とは文字どおり、通帳、印鑑や契約書等の重要なもの(現物)を保管している金庫や代表者の引き出し、などを確認する調査のことです。
この税務調査手法は納税者とトラブルになり易いので、あくまで納税者や税理士の承諾を得た上で実施されることになります。
最近はIT化が叫ばれて久しいので、税務調査において税務調査官はパソコン自体を確認することが多いです。
これも現物確認調査の一つであり、もちろん納税者や税理士の協力を得た上で実施されるのですが、
具体的にはパソコン内のフォルダーの確認やメールのやり取りなどを税務調査官が目検でチェックします。
場合によっては税務調査官が持参したUSBにデータを吸い上げた上で、税務署内で分析することもあります。
ある程度大規模な税務署には情報技術専門官と言って、この分析作業をフォローする専門家がいるのです。
元税務調査官としての経験から言うと、パソコン内のデータにこそ真実が存在していることが多いです。
例えば、パソコン内に「申告用の売上表」と「本当の売上表」という2つのフォルダーがあったとしたら、
発見した税務調査官は不審な気持ちを抱きながらフォルダーを確認することでしょう。
パソコンにて何らかの小細工をした上で、売上を除外したり架空原価等を計上してしまうと、
税務調査官側に隠蔽又は仮装の事実有りと認定され追徴本税額の外に35%の重加算税が賦課されることになります。
またこの場合には、修正申告の対象期間が7年になってしまいますので、相当な税負担を覚悟する必要があるでしょう。
財務省主税局勤務のほか東京国税局管内の税務署統括国税調査官や国税庁主任税務分析専門官等を経て退官。テレビ出演、新聞・雑誌等メディアに掲載多数。
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