今回は、「なぜうちに税務調査が来るのか?」という疑問に税務調査専門税理士がお答えします。
■ほとんんどの税務調査は念のために所得金額を確認するレベル
■稀に税務調査官が多額の不正計算を事前に認識している場合がある
■税理士として主張したいのは「大切なのは適性な申告」ということ
税務調査に係る相談のため私の税理士事務所にいらっしゃる納税者の方(会社経営者様若しくは個人事業主様)が口々におっしゃること、
それは「うちは無申告でもないし何も悪いことしてないのに、何で税務調査が来ることになったのか不思議なのです。」という言葉です。
以前は税務調査官として税務調査を実施する立場でしたが、税理士として税務調査を受ける立場である納税者の方に寄り添ってみると、
改めて個人事業主や法人経営者の方が感じられている「税務調査」に対する不安の大きさを実感します。
そんな時、税務調査専門税理士である私から納税者の方にご説明するのは、
ほとんどの税務調査は何かしら脱税や仮装隠ぺい行為に係る確証を有しているわけではなく、
納税者の方が税務署に提出した確定申告書の所得金額(確定税額)が正しいかどうか、また無申告となっている方については申告義務があるのかないのか、
念のため確認したいだけなのですよ、とお伝えしています。
税務署若しくは国税局(調査部や資料調査課等)の税務調査官が実施する税務調査は、
国税局査察部の査察官が実施する強制調査とは反対の性格を有するものとして、
分類上は任意調査と言われています。
強制調査とは、その実施に当たり所轄裁判所の令状をもって強権的に実施されるものであり、
一義的には検察庁に対し告発することを目的として実施されます。
したがって、このような国税局査察部が実施する強制調査は、
その目的性から個人事業主や法人経営者の方の権利は著しく制約されることになるため、
あらかじめ仮装隠ぺいの事実若しくは偽りその他不正の行為に係る相当程度の確証を有していることが前提となります。
一方で、任意調査とは、所轄裁判所の令状を有しておらず税務調査官に付与されている国税に関する質問検査権に基づき実施されるものです。
ただし、「任意」という言葉ではありますが、法律上において納税者は税務調査を受忍する義務が規定されていることから、いたずらに税務調査を拒否することは出来ません。
もちろん納税者側においても日々お仕事(ビジネス)をしていることから、
申告所得金額の確認を目的とした任意調査である以上は、
税務調査の日程や場所等について最大限納税者の事情に配慮すべきなのは言うまでもありません。
この点は焦らずに、信頼できる税理士に相談した上で日程等を決めるべきでしょう。
このように任意調査としての性格を有する通常の税務調査は、税務調査官側おいて予め仮装隠蔽の事実に係る確証を有していることは少ないため、
税務調査官は、その端緒を把握するために「あの手この手」で税務調査を実施するのですが、
税務調査専門税理士としての経験上、一つだけ注意すべきポイントがあります。
それは、税務調査官の表情・立ち振る舞いが異様に余裕綽々の時です。
このような場合、既に税務署内の準備調査(下調べ)の段階で仮装隠蔽の事実に係る何らかの確証を有していることが多いです。
税務調査官は、調査場所において実際に売上除外や架空原価といった不正計算に係る端緒を把握した場合には、厳しい態度で追及してくるようになります。
税務調査官の性格によっては態度が豹変するような方も稀にいらっしゃいます。
仮装隠蔽の事実は褒められるものではなく非違事項として当然に是正されるべきものです。
当たり前ですが、黒は税理士がどんなに抗弁しても白にはならないのです。
ただし、同じ黒だとしても税理士の考えるシナリオによっては、負担すべき税額に多額の差異が生じることがあります。
また、灰色(グレー)部分の解釈については税理士が理路整然と丁寧に説明することで白と認定されることもあります。
これらの点については、まさに税務調査の立会を専門としている税理士が得意とする分野ではないでしょうか。
財務省主税局勤務のほか東京国税局管内の税務署統括国税調査官や国税庁主任税務分析専門官等を経て退官。テレビ出演、新聞・雑誌等メディアに掲載多数。
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