パブリックコメントの結果混沌となっていた会社員の副業300万円問題ですが、最終的には新たに帳簿保存規程を導入することで通達改正案が一部修正されています。
会社員等の副業が事業所得と雑所得のどちらに該当するのか?、更にこの通達改正と税務調査との関係について税務調査専門税理士がご説明いたします。
■エア副業(架空の副業)は税務調査で重加算税を検討されます。絶対NG!
■300万円基準や帳簿保存規程以前の問題として税務署側は社会通念で判断
■副業の規模や反復継続性など税理士に相談した上で申告することが大切です
個人事業主やフリーランスの方にとって最も気がかりなこと、それは毎年の所得税の確定申告ではないでしょうか。しかしながら確定申告は会社員の方にとっても無縁ではありません。先行きが不透明な世の中ですから、副業を行っている会社員の方も多いことでしょう。
働き方改革や副業解禁などの議論も後押ししているのか、ここ最近私のような税務調査専門税理士事務所にも副業に関する相談が多いです。
実際に副業を行っていれば良いのですが、「エア副業」では話になりません。つまり、(やってもいないような)架空の副業で赤字が生じたように装い還付申告をすることです。
例えば、給与所得1,000万円の会社員が「エア副業」で事業所得の赤字が1,000万円生じたことにすれば、損益通算の結果会社に天引きされた源泉所得税が全額還付されることになります。
このような手口は、一昔前に副業コンサルタントによる脱税指南として過去に大きな話題となりました。
もちろんこのような手口は、税務調査官の目に留まり税務調査の対象となるのに時間はかからないでしょう。これは立派な不正還付であり、レベル的にはもはや脱税と言えます。
税務調査で指摘されれば、追徴本税額とは別に35%の重加算税が賦課されますし、還付金額次第では査察事案に発展する可能性さえあります。絶対にやってはいけません。
なお、実際に副業を行っている、つまり税務調査官に「エア副業(架空副業)」ではないと信じて貰えたとしても新たな問題が待ち構えています。
それが今回の通達改正で話題となっているとおり、その副業がどのような所得の種類(具体的には事業所得or雑所得?)になるのか、という副次的な問題です。
税務調査の結果、副業が事業所得と認定されれば給与所得との損益通算が可能ですが、雑所得と認定されてしまうと給与所得との損益通算が出来ません。
今回のパブリックコメントの結果、300万円基準のほか帳簿保存規程が織り込まれる形で通達改正案が修正されましたが、
税務調査の実務上は、300万円基準や帳簿保存規程のみで一律に事業所得と雑所得を切り分けるわけではないのです。
事業所得なのか雑所得なのかは、通達改正前と同様に副業の反復継続性の有無などにより税務署側に判断・区分されることに注意する必要があります。この点は過去の最高裁判例を読み込む必要がありますのでここでは省略致します。
いずれにしても副業で売上や収入が300万円以上稼いでおり帳簿も作成・保管しているから事業所得と思い込み還付申告してしまうと、
その後の税務調査における否認リスクがそれなりに高いと感じます。
税務調査で指摘されてしまうと、修正申告書を提出することによる追徴本税額とは別に、
原則10%の過少申告加算税が賦課されてしまいます。還付申告書を提出する前に税務署や税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
財務省主税局勤務のほか東京国税局管内の税務署統括国税調査官や国税庁主任税務分析専門官等を経て退官。テレビ出演、新聞・雑誌等メディアに掲載多数。
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