令和4年1月10日現在において、新型コロナウイルス(とりわけオミクロン株)の新規感染者数は増加傾向であり終息にはほど遠い状況です。
この傾向は、沖縄県・東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・大阪府・愛知県・兵庫県・福岡県・北海道など大きな都市を抱える地域で顕著のようです。
今回は新型コロナウイルス感染症の影響で税務調査が現在どのような影響を受けているのか、また今後どのような影響が予想されるのか、についてご説明いたします。
■令和3年8月以降、調査必要度の高い事業者に対象を絞り調査宣言されている
■新型コロナウイルスは過去の国難と比べても税務調査に与える影響は最も大きい
■将来的には税務調査よりも行政指導の比重が大きくなるのでは、と予想する
今日は2022年1月10日ですが、東京においては寒さが日に日に増してきていますが、一方でオミクロン株の市中感染が本格化してきています。
昨年の7月10日に国税庁・国税局・税務署において税務調査官の定期人事異動が実施されてから半年が経過しました。
これまでの新型コロナウイルス禍での税務調査については、東京国税局管内の税務署のスタンスがはっきりしているように感じます。
緊急事態宣言が発令中の場合には、
ほぼ税務調査が実施されないか、あるいは税務調査を実施したとしても税務調査必要度の高い悪質な納税者に限定される一方で、
緊急事態宣言が発令していない状況下においては、あくまで粛々と従前どおり税務調査を実施ている、ということです。
通常ですと年が変わった1月より、「税務署から税務調査を実施する旨の連絡(事前通知)が来た」というご相談を非常に多くいただくのですが、
令和4年1月の今年に限っては、現時点でそのような相談がそこまで多くはないです。
ということは、オミクロン株の影響もあり国税局や税務署側は税務調査の新規着手件数を引き続きある程度絞り込んでいるのではないでしょうか。
かといって緊急事態宣言下ではないので全く税務調査を実施していないわけではなく、
新型コロナウイルス感染症(とりわけオミクロン株)の影響を考慮し、今後はある程度真に税務調査が必要な事業者に絞って調査宣言してくる、と思われます。
真に税務調査が必要な事業者とは、①売上除外等の重加算税が見込まれる、②長期無申告である、③多額な消費税還付申告をしている、などが該当します。
過去をさかのぼると、2020年3月から2020年9月までの間は新型コロナウイルスの影響を考慮し、税務調査の新規着手がほぼありませんでした。
しかしながら今回は過去と異なり、新型コロナウイルス禍においても調査必要度の高い法人や個人事業主に対し、それなりの件数で税務調査が実施されています。
一番大きな理由としては、業種にもよりますが全体としての企業業績は統計的には良好、ということではないでしょうか。
また納税者を牽制するためにも、国税庁として「新型コロナウイルスのため税務調査は一切行いません。」とは当然言えないのだと思います。
2008年のリーマンショック時ですが、この時はさほど税務調査が影響を受けた記憶がありません。
未曽有の金融危機ではありましたが、実体経済への影響が極めて甚大であったとまでは言えなかったためと思われます。
一方で、1995年の阪神淡路大震災や記憶に新しい2011年の東日本大震災のような自然災害時においては、
それぞれを所轄する大阪国税局管内の税務署や仙台国税局(一部東京国税局)管内の税務署では、
被害の甚大さと国民感情に鑑み一定期間税務調査が実施されませんでした。
今回の新型コロナウイルス感染症はその範囲が全国におよび、依然として終息にはほど遠い状況ですので、
過去の国難とは比較できないほど税務調査に対するインパクトは大きいと言えます。
なお新型コロナウイルス感染症に対し、現在税務調査官が具体的にどのような感染防止対策を講じているのか、についてはぜひ下記の人気記事をお読みください。
あまり大きなニュースにはなっていませんが、令和4年1月以降に税務調査等で調査官から帳簿等の資料提出を求められた場合には、
これまでのように来署や郵送(ポスト投函)で外出することなく、ご自宅のパソコンやスマホからe-Taxで提出できるようになります。
この新しい施策は、新型コロナウイルス感染症がまだまだ長引くことを前提に打ち出された、と考えるのは深読みしすぎでしょうか。
いずれにしても外出する必要がなくなり、納税者の利便性が高まるため良い施策だと思います。詳細は下記をクリックしてください。
国税庁においては、取りまとめ役である総務課と税目毎の主管課(法人課税課、個人課税課、資産課税課)が中心になり、
今後の税務調査のあり方について、オミクロン株後の状況を踏まえ引き続き検討を重ねているはずです。
前述したように新型コロナウイルス禍においては、調査必要度の高い事業者を対象として税務調査が実施されている状況ですが、
マスコミ等がオミクロン株を報道しなくなったタイミングで、税務調査がコロナ前のように本格化されるのでは、と考えています。
またこれは私の個人的な考えですが、新型コロナウイルスの終息が一向に見込まれない状況が続くようであれば、
調査官の作業負荷が大きい税務調査よりも、将来的には簡易な接触形態である行政指導という手続の比重が増してくるのでは、と思います。
行政指導と税務調査の違いについてはぜひ下記をクリックしてください。
最終的に今後の税務調査件数がどうなるのか、についてはまさに新型コロナウイルスの状況次第ですが、
行政指導を除く純粋な税務調査件数という意味では、コロナ前の50%以下の件数が継続する、と現時点では推測しています。
財務省主税局勤務のほか東京国税局管内の税務署統括国税調査官や国税庁主任税務分析専門官等を経て退官。テレビ出演、新聞・雑誌等メディアに掲載多数。
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