家賃支援給付金と税務調査の関係、家賃支援給付金の消費税法上の取扱いについてご説明しております。
■家賃支援給付金は法人税法・所得税法上は課税扱いである
■家賃支援給付金の課税上の取扱いは持続化給付金等と同じである
■家賃支援給付金は消費税法上は不課税(課税対象外)である
今回の記事では家賃支援給付金の税制上の取り扱い、
それともう一つ、大きな関心事項である『家賃支援給付金の支給を受けると税務調査になるの?』という疑問についてお話ししたいと思います。
別記事:『新型コロナウイルスと当面の税務調査』もぜひご覧ください。
まずはお堅い話で恐縮ですが、法律上非課税として扱われるためには、
「家賃支援給付金は非課税です」と明確に税法などで規定されなければなりません。
家賃支援給付金を非課税にするという考えは、税法立案を所掌する財務省にも法令解釈通達を所掌する国税庁にも無いですから、
持続化給付金や事業復活支援金と同様、支給を受けた場合には所得税法上も法人税法上も課税扱いとなります。
具体的には、所得税確定申告書において、所得の種類として通常は事業所得になりますので、決算書で収入計上しなければなりません。
事業収入の科目名としては、売上と区別するためにも「雑収入」という科目名にした方が良いでしょう。
ここで勘違いしてはいけなこと、それは、「所得の種類はあくまで事業所得であり、間違っても雑所得ではない。」といことです。
ここは少しややこしいのですが、法人税法と異なり所得税法の場合は、「所得の種類が何なのか?」ということがとても重要になるのです。(ここでは何故重要になるのかは省略致します。)
一方で法人税法の場合は、税務署としては益金に計上していれば科目名はなんでも良いというスタンスです。少し乱暴な言い方かもしれませんが、、、。
まあ通常であれば雑収入として特別利益に記載すべきだと思います。会計的には損益計算書上は経常損益よりも下の項目になります。
国税局や税務署が、経済産業省、中小企業庁またはその業務委託先から支給者名簿の提供を受けることはあるのでしょうか。
これについては、歯切れが悪いのですが、
「表向きの回答としては、税務当局が他の役所から情報を貰うことは無いでしょう。」ということになると思います。
あくまで表向きはない、ということです、、、。
別記事:『事業復活支援金と税務調査』をご参照下さい。
いずれにしても国税庁、国税局そして税務署の情報収集能力を甘く見てはいけません。
当然ではありますが、支給を受けた家賃支援給付金は正しく申告しなければなりません。
話は変わりますが、持続化給付金事務の委託先であった一般社団法人サービスデザイン推進協議会が散々批判されたことから、
家賃支援給付金の委託先は、株式会社リクルートとなっていました。
再委託先を見ると、リクルートとは関係のない企業が連なっています。
この点は、持続化給付金の時の(今何かと話題の)電通と電通の子会社が再委託先となっていた点と異なりますね。
毎回ではあります、経済産業省(中小企業庁)における業務委託先の選定については興味深いですね。
あれだけ調達手続の不透明さや再委託が問題になりましたので、今後はより公平で透明性のある調達手続が求められることになるでしょう。
施策のスピード感とはどうしてもトレードオフの関係になってしまいますので、
意見招請等を経て総合評価方式での一般競争入札という長い調達プロセスを経ることが良いのかどうか、様々な議論があると思います。
通常ですと、2年前の売上が1,000万円を超えている場合には、個人事業主であれ法人であれ消費税の申告義務が生じます。
前回お話しした、持続化給付金、東京都感染拡大防止協力金、そして今回の家賃支援給付金ですが、
そのいずれも「消費税法上は不課税」なので、消費税の計算上は課税売上高に含める必要はないのです。
これらの給付金、協力金は資産の譲渡等の対価として受領したものではないので、
所得税や法人税の考え方とは異なり、消費税としては課税の対象ではないのです。
家賃支援給付金とは関係ありませんが、2年前の売上が1,000万円を超えているため、その2年後において消費税の申告義務のある事業者の方は注意してください。
くどいようですが、《所得税・法人税》と《消費税》の考え方は異なるのです。
ここでもう一つ、《所得税・法人税》と《消費税》の違いを一つ。
例えば、個人事業主の方が事務所を借りて営業をしているとします。
当然に、決算書上は「支払家賃」を必要経費として計上しているでしょう。
毎月10万円支払っていれば、年間で120万円を支払家賃として計上出来ますので、その分所得税の課税所得が圧縮されることになります。
さて、消費税の話しになりますが、
この年間120万円の支払家賃ですが、消費税の計算上は、例えその事務所を100%事業のために使用していたとしても、全く控除の対象にならない場合が多いのです。
税務調査官の感覚としては、税務調査前に税務署内で実施する準備調査の段階で、消費税申告書や決算書を見ながら、
「顧問税理士がいない個人事業主なので、きっと消費税の計算上、支払家賃を控除の対象にしてるだろう。」と当たりを付けているはずです。
何が違うかのか。
何で100%事業のために使用しているのに、所得税と異なり、消費税の場合は控除の対象として認められないのか。
それは「不動産賃貸借契約書」次第なのです。
契約書上の用途が「居住用」と明記されている限り、税務調査官に対し「100%仕事で使っている」と主張しても無駄なのです。
逆に、契約書上の用途が「事業用」となっていれば、消費税の計算上控除の対象になるのです。
では何故そんなに形式ばった話になるのか、税法は実質で判断するのではないのか。
そんな声が聞こえてきそうですが、実は大家さん側の問題が深く絡んでくるのです。
大家さん側からすると、「居住用の賃貸収入は(事業用の賃貸収入と異なり)非課税扱いなんだから、家賃に消費税分をプラスしてない。」という話になるのです。
結局のところ、家賃を貰う方は非課税のため消費税の申告をしていないのに、家賃を支払う方は消費税の申告書上で支払家賃を控除の対象にしてしまったらバランスがおかしくなるのです。
税務署的な言い方をすると、「国損が生じてしまっている」ということになるのかもしれません。
過去に消費税の申告書を税務署に提出された方は、一度「不動産賃貸借契約書」の用途欄を確認されることをお勧めいたします。
財務省主税局勤務のほか東京国税局管内の税務署統括国税調査官や国税庁主任税務分析専門官等を経て退官。テレビ出演、新聞・雑誌等メディアに掲載多数。
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